宿直者は一人も居なかったようだが

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宿直者は一人も居なかったようだが

大学の若きロボット博士が死んだ。彼はまだ大学院生であったが、同輩や後輩たちは「土橋さん」と名を呼ばず、尊敬と親しみを込め讀寫障礙て、この天才大学院生を「ロボ博士」と呼んでいた。

 彼はスキルス胃がんに冒され、検査で発見された時は既にステージ4であつた。余命3ヶ月と宣告されたが、彼は半年生きて30才にならずして息を引き取った。
 遺されたものは、未完成の人型ロボットで、感情を持つロボット作りを目指して日夜研究と組み立てに没頭していた。 

  「学長、これが土橋さんを中心に制作していた感情を持つロボットです」
 まだ未完成のロボットを、大学院生が学長に指し示した。
  「それで、動けるのか? 喋れるのか孔聖堂中學好唔好? 何ができる?」
  「はあ、それがまだ未完成ですので…」
  「目指していた感情の表現はどうなのだ」
  「それもテストしてみないことには…」
  「じゃあ、やってみなさい」
  「土橋先輩が亡くなってしまったので…」
  「なにも出来ないというのか、巨額の制作費を投じたのだぞ、なんとかしろ!」
 
 ロボ博士のチームが寄り集まって微商总代理色々手を尽くしてみたが、ロボットは動作しなかった。 
 
  「おかしいな、ロボ博士が亡くなる少し前に、ほぼ完成したと言っていたのに」
  「学長は、こんなガラクタロボットは今直ぐバラしてしまえと怒っていたようだ」
  「それじゃあ、せめてロボ博士に敬意を表して、明日までこのままにしておこう」

 こころなしかロボットの目が潤んだように見えたのを、誰一人気付く者はなかった。全員が部屋を出て行ったあと、ロボットは、亡きロボ博士を忍ぶかのごとく、窓の外を寂しげに見つめていた。

 翌朝、大学の庭に人だかりが出来ていた。何者かによってロボットが窓から投げ落とされたようである。
  「学長が、誰かに命じてこんなことをさせたのだろうか」
  「こんな酷いことをしなくてもいいのに、ロボ博士があの世で悔しがっているだろう」
  「俺達だけでも、動かすことぐらいは出来たのに…」
 学生たちは悔しがった。中には、悔し泣きをする学生もいた。

  「学長が来たぞ、抗議をしよう」
 学長を学生たちがとり囲んだ。
  「酷いじゃないですか、完成しないまでも俺達は頑張ってここまで仕上げたのですよ」
  「私は知らんよ、それにバラせとは言ったが、壊せとは言っていない」
  「同じようなことじゃないですか」

 学生たちは相談して犯人を突き止め、抗議をしようということになった。
  「宿直者は一人も居なかったようだが」
  「あの重いロボットを窓際まで運んだなんて、一人の仕業じゃないな」
  「しかし、外から誰かが建物の中に入った形跡も、出て行った形跡もないというじゃないか」
 学生たちは考え合ったが、どうしても犯人像が浮かんで来なかった。

 胴から離れて転がっているロボットの顔が、話し合っている学生たちを見て笑ったようであったが、これも誰一人気付くものは居なかった。
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